触れられないけど、いいですか?
あの時のこともあって、私が男性恐怖症だということを聞いてもお義父さんは疑わなかったのだろう。

でもお義父さんは、もし男性恐怖症のことを知っても優しく理解してくれるんじゃないかと思っていた。勝手な考えだったけれど、翔君も同じ思いだったはずだ。


やっぱり、受け入れてはもらえなかったんだ。



「……あちらのお義父さんは、何て言ってたの?」

「うん……」

「私は大丈夫だから、教えて。本当のことを知りたいの」

私がそう言うと、父はゆっくりと口を開く。



「……翔君はあちらの大事な一人息子だからね。間違いのない結婚をさせたいんだそうだ」

「…………」


間違い。

その言葉が私の胸にズシリとのしかかり、苦しい。だけど否定も出来ない。

この先、男性恐怖症のせいで日野川家に迷惑を掛けることがあるかもしれない私は、日野川家の妻には相応しくないだろう。


そもそも翔君のことだってたくさん傷付けてしまうかもしれない。



「そんな顔しないで、さくら」

部屋の端で話を聞いていた母が、そう言いながらそっと私の隣に腰掛ける。


「あなたは何も悪くないわ。そもそも、お見合いで知り合ったばかりの方との急な結婚だったんだもの、白紙に戻ったって何も困ることはないわ」

母がそう言うと、父も。


「ああ、そうだな。あちらのお父さんも怒っている訳ではないし、寧ろ申し訳なさそうにしていたよ。結婚はなくなってしまったが、今後も家族間で良好な関係を続けていこう」


父と母が、そんな風に優しい言葉を掛けてくれたけれど……

正直、半分は頭に入ってこなくて。


翔君との結婚がなくなってしまったなんて、認めたくなくて。認められなくて……。


『お見合いで決まった結婚が白紙に戻っても困ることはない』って母は言ってくれたけれど……


違うの。


私は、翔君のことが好きなんだよ。


翔君がいいの。



翔君と結婚したいのーー。
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