触れられないけど、いいですか?
「あ、あの……?」

緊張や不安で戸惑いながらも口を開くと、お義父様は翔君によく似た笑顔を、にっこりとこちらへ向けてくる。


「この間は、さくらさんのお父さんへ電話で失礼なことをお話ししてごめんね」

「あっ、い、いえ!」


あれ……? もしかしてこの流れは。
私と翔君の結婚、やっぱり許してもらえたりーー


「とは言え、僕は変わらず、君と翔の結婚には反対なんだ」


……期待をしてしまった自分を恥じる。
そうだよ、そんな簡単な問題だったらそもそも私だって今ここにいない。


……それを理解してもらう為に来たんだ。



「あの、私……」

「でも、結婚するのかしないのか、最後に決めるのは君達だもんな」

「え……?」

ふふ、と優しく笑ってみせるお義父様。
お義父様は結婚に反対してる……んだよね?

そうとは思えない、優しい空気を纏っているような気がする。


「何をそんなに驚いた顔をしているんだい? 翔もさくらさんももう子供じゃないんだ。最後の判断を自分達でするのは当然だろう?」

「え、あ、まあ……」

「それなら、僕から意見することはもう何もないよ。
ただし、日野川グループの為に、さくらさんには色々頑張ってもらうよ。男性恐怖症で苦労することもたくさんあると思うけどね……まあ、それについてはこちらからも出来る限りサポートしよう」

「え……?」

「何か質問があるかい? いいよ」

聞きたいことは他にもあるけれど、まずは……


「日野川グループは、やっぱり翔君に継がせるんですね?」
< 164 / 206 >

この作品をシェア

pagetop