触れられないけど、いいですか?
「翔は頭も良いし、今すぐにでも後継者としての修行をさせたいくらいだよ。
というか、一人息子の翔に後を継がせようとするのは普通のことじゃないかい? 何をそんなに驚くことがある?」
「え、それは……」
せっかくこう言ってくださっているのだからこのままうやむやにすることも出来るかもしれない。けれど……
「私と結婚するなら、翔さんとは勘当されるのかと思って……」
勿論お義父様のおっしゃる通り、一人息子である翔君と縁を切るなんて簡単に考えることではないだろう。
でも、息子の嫁として迎え入れたくない私のことを、翔君は選んだ。実質、翔君は日野川グループより私のことを選んだ。それは間違いない。
それに……
「……私が言うことでもないかもしれませんが、そんなにあっさりと私のことを受け入れてくださるのなら、何故一度縁談をお断りされたんでしょうか……?」
それは純粋な疑問だった。縁談を白紙に戻したいとおっしゃったのは、決して気軽な気持ちでも、思い付きでもなかったはずだから。
するとお義父様は、やっぱり柔らかく微笑んで、こう言った。
「翔のことが大事に想っているからだよ」
「え?」
「さくらさんはとても素敵な女性だけれど、異性に触れられないとなると、いつか翔が傷付くんじゃないかと思ってね。勿論、それを見てさくらさんも傷付くと思ったんだよ。
正直、翔にとってもさくらさんにとっても、この結婚は所詮〝政略結婚〟だと捉えているのだと思っていたんだ。
それならば、いずれ二人が傷つき合うくらいなら今の内に引き離してしまった方がいいんじゃないかと思ってね」
……そう、だったんだ。認められていないとか拒否されたとかじゃなくて、お義父様は翔君の気持ちを、そして私の気持ちまでも真剣に考えてくださっていたんだ……。
というか、一人息子の翔に後を継がせようとするのは普通のことじゃないかい? 何をそんなに驚くことがある?」
「え、それは……」
せっかくこう言ってくださっているのだからこのままうやむやにすることも出来るかもしれない。けれど……
「私と結婚するなら、翔さんとは勘当されるのかと思って……」
勿論お義父様のおっしゃる通り、一人息子である翔君と縁を切るなんて簡単に考えることではないだろう。
でも、息子の嫁として迎え入れたくない私のことを、翔君は選んだ。実質、翔君は日野川グループより私のことを選んだ。それは間違いない。
それに……
「……私が言うことでもないかもしれませんが、そんなにあっさりと私のことを受け入れてくださるのなら、何故一度縁談をお断りされたんでしょうか……?」
それは純粋な疑問だった。縁談を白紙に戻したいとおっしゃったのは、決して気軽な気持ちでも、思い付きでもなかったはずだから。
するとお義父様は、やっぱり柔らかく微笑んで、こう言った。
「翔のことが大事に想っているからだよ」
「え?」
「さくらさんはとても素敵な女性だけれど、異性に触れられないとなると、いつか翔が傷付くんじゃないかと思ってね。勿論、それを見てさくらさんも傷付くと思ったんだよ。
正直、翔にとってもさくらさんにとっても、この結婚は所詮〝政略結婚〟だと捉えているのだと思っていたんだ。
それならば、いずれ二人が傷つき合うくらいなら今の内に引き離してしまった方がいいんじゃないかと思ってね」
……そう、だったんだ。認められていないとか拒否されたとかじゃなくて、お義父様は翔君の気持ちを、そして私の気持ちまでも真剣に考えてくださっていたんだ……。