触れられないけど、いいですか?
「うん。彼は何だって?」

そう問い掛けてくる翔君の声はとても落ち着いている。


「相変わらずだったけど……ちゃんと謝ってくれたよ」

そう告げたら、彼は「そっか」とだけ答えた。
そして。


「……」

「……」

「……」

「翔君?」

「ん? 何?」

「いや、その……」


おかしいな、無言だ。

無言が変だという訳ではないけれど、今の流れだと普通、翔君も優香さんと話してきた時のことを話してくれない?

私が霜月さんと話をしてきたこと、そして翔君が優香さんと話をしてきたことは、お互いにメッセージアプリで教え合っていた。でも、具体的にどんなことを話したかは言い合っていなかった。

気になるなぁ。でも、聞き辛い……。


結局聞き出せないまま、車は目的地へと到着した。
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