触れられないけど、いいですか?
休日のみなとみらいは流石に賑わっていて、うっかりしたら翔君とはぐれてしまいそうだ。


「油断するとはぐれちゃいそうだね」

翔君も同じことを思ったらしく、そう言うと彼は私に右手を差し出してきた。


「手、繋ご」

爽やかにそう言われ、断る理由なんてない。

うん、と答えて彼の右手に自分の左手をそっ……と乗せる。


手を繋ぎながら、賑わう街並みを歩いていく。
こうして歩いていると、なんだか普通の恋人同士みたい。
いや、元々普通じゃなかった訳ではないのだけれど……でも、こうやって手を繋いで歩くことは私は一生出来ないんだと思っていたから。


男性恐怖症は、まるで呪いのように自分から離れてはくれなくて辛かった。

だけど今は、少し感謝……とまではいかないけれど、


男性恐怖症があったからこそ、今の幸せを人一倍感じることが出来ている。
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