触れられないけど、いいですか?
これからの新生活の買い物をしたり、途中で甘いものを食べたりしながら過ごしていたら、あっという間に夕方になった。


「あんまり帰りが遅くなるとさくらのお父さんが心配するから、そろそろ帰ろうか?」

彼の優しいその言葉に、私はついムッとしてしまう。


「もう結婚するのに、いつまでもお父さんのこと気にしなくてもいいじゃない」

翔君の気持ちは有難いけれど、まだ十七時だ。
私はもう少し翔君と過ごしたい。


「はは。俺も勿論まださくらとデートしてたいよ。でも、同居を始めるまではお義父さんに心配掛けないようにしていこう」

「う〜ん……でも二人で夕食食べるくらいはいいと思うんだけど……今までだってあったし……」

「うん……実は今日は十九時までには帰ってくるようにってお義父さんから釘を刺されててさ」

「えっ⁉︎」

いつの間に。全然知らなかった。
だけど、少し納得かも。翔君との結婚が正式に決まり、私が朝宮家を出ていく日が近付いていけばいくほど、父の私への過保護ぶりが増していくのだ。元々過保護ではあったけれど、最近はやたら私の帰りを気にしたり、体調を気にしたり。そしてやたら話し掛けてきたり。


「さくらがお嫁に行ってしまうのが寂しいんだね」


微笑みながら翔君が言う。
母にも姉にも同じことを言われた。


まったく、私もう二十四歳だよ? そんな風に過保護にされるなんて恥ずかしいよ。

でも、私が悩んだ時、辛い時、父はいつでも私の味方になって支えてくれた。大切に育ててきてくれたこと、本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。

そう考えると、私も少し寂しくなってくる。
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