触れられないけど、いいですか?
「うん。じゃあ今日は帰ろう」

父の気持ちを考えると、なんだか早く帰った方がいい気がしてきた。


……だけど、翔君ともう少し一緒に過ごしたいという気持ちも、なかったことには出来なくて。


「観覧車、最後に乗っていきたい」

みなとみらいの定番とも言える、大きな観覧車。
有名だけれど、乗ったことはない。
翔君に出会うまで、自分にこんなにも好きな相手が出来るとは全く思っていなかった。けれど、もしそういう相手が出来たとしたらーーいつか、その人と一緒に観覧車に乗りたい、なんて少女漫画のような理想はずっと待っていた。


「観覧車?」

「うん……あ、嫌?」

そうか、男性はこういうの、あんまり興味ないかもしれない。
自分の理想を押し付けてしまったかな、と不安になったけれど。


「ううん、凄く嬉しいよ。実は俺も、一緒に乗ろうって言おうとしてたんだ。だからタイミングにちょっと驚いて」

「え、そうだったんだ」

「うん。夕景がきっと綺麗だし……それに、ゆっくり話したいこともあったから」

話したいこと? 今日、買い物をしたり食事をしたりしながら色んな話をしたけれど……改まって何だろう?


その後、チケットを購入し、私達は黄色のゴンドラに乗り込み、向かい合って座る。


「わあ……綺麗だね」

窓から見える街並みが想像以上に絶景で感激する。
ビルや施設のライトがキラキラと輝いていて、眩しい。そして幻想的だ。


「うん、凄くいい景色だ。もう少し遅い時間なら、ライトがもっと綺麗に見えたかもしれないね」

「確かに。じゃあ…….」

「ん?」

「……今度は夜に、また一緒に観覧車乗ってくれる?」

私がそう聞くと、翔君はクスッと笑った。

「な、何で笑うの」
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