触れられないけど、いいですか?
「いや、俺の返事はyesに決まってるのに、やたら緊張して聞いてくるさくらが可愛くて」

「〜〜っ!」

せっかく勇気出して言ったのに、と少し膨れるも、yesの返事はとても嬉しく思った。


すると、今度は彼の方が「あのさ」と言葉を発す。


そう言えば観覧車に乗る前、話したいことがあるって言っていたっけ。


「何?」

「優香と……ちゃんと話してきたよ」

「!」

その話か。
勿論、凄く聞きたかった話。話してくれることまでとても嬉しい。

だけどこのタイミングで話されるとは思っていなかったから、心臓がやたら脈打ち始める。

でも、ちゃんと聞きたい。



「いつ?」

「五日前の火曜日。本当はもう少し早く話し合いたかったんだけど、俺の仕事が忙しくて予定が合わなくて。
でも。今日さくらと会うまでには絶対に済ませておきたかったことだから、何とか時間作って話してきた」

「そっか。優香さんは何だって?」

「泣かれた。でも泣き喚くとか泣き散らすとかじゃなくて、静かに泣いてた。俺の返事が、最初から分かっていたかのように」


勝気で、強気で。私達の仲を邪魔するとまではっきり言い放った優香さん。

だけど本当は……翔君の言う通り、分かっていたのかもしれない。自分がしていることは間違っているって。


間違っていることが分かっていてもその道に行ってしまうことは、とても苦しかったと思う。


「そうだったんだね。話してくれてありがとう」

「……」

「翔君?」
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