触れられないけど、いいですか?
「さくらさん?」

「あ、いえその……私には勿体無い位の褒め言葉だなって思ったらつい……すみません」

なんとか笑顔で上手く誤魔化したつもりだったけれど、それは彼にはお見通しだったようで……


「すみません。昨日会ったばかりの人間にこんなこと言われても困ってしまいますよね」

「え?」

「調子に乗ってしまってすみません。少し控えます」


あ、どうしよう……。翔さんが悪い訳ではないのに、全部私のせいなのに、彼を傷付けてしまった?


謝らないと……。
だけど私の今の気持ちを説明するには〝あのこと〟も話さなくてはいけないんじゃないだろうかと考えると、何て言ったらいいのか分からなくて、言葉が出てこない。


すると。


「だけど、全部本当です」

「え?」

その声に導かれるように顔を上げると、優しい微笑みを浮かべながら真っ直ぐに私を見つめていて……



「お世辞なんかじゃなくて、全て思ったことを正直に伝えただけです。それは分かってください」



そう答えてくれた。


本当にこの人は、どこまでも優しく、どこまでも完璧な男性だ……。
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