触れられないけど、いいですか?

だけど結局、何一つ上手くはいかなかった。
翔と朝宮さんは再び婚約関係を結び、予定通りうちのホテルで結婚する。
さすがに朝宮さんのヘアメイク担当にはならないように上司にお願いしたけれど、結婚式には招待されてしまうかもしれない。祝福なんてしたくないけれど、かと言って欠席したら、逃げみたいで嫌だ。


「俺だったら行かないけどね」

久し振りに家にやって来た優斗が、まるで自分の家かのように私の部屋で寛ぐ。


「ちょっと。ベッドに寄りかからないでよ」

「何だよ、そんなことで恥ずかしがるような関係じゃないだろ」

「恥ずかしがってるんじゃないわよ。ベッドにあんたの匂いがつくのが嫌なのよ」

「ひでぇ」

「それより、優斗は行かないの? 翔と朝宮さんの結婚式」

「いや、俺は招待されないだろ」

「朝宮さんと同じ会社でしょ?」

「部署違うから仕事中はほとんど接点なんかないし。優香と日野川さんみたいにずっと昔からの知り合いでもなく、数ヶ月前に初めて会話した程度だし」

まぁ言われてみれば、確かにその関係性なら招待はされないのが普通か……。


「でも、もし招待されたら?」

その可能性だって、ないことはないだろう。
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