触れられないけど、いいですか?
「まだ夕方だよ」

あ……そう言えば少し久し振りだ、この感じ。この、エスパーのごとく心を読まれる感じ。


「翔君、どうして?」

まだ夕方なら、何故ここにいるのだろう?


「……さくらが今朝、具合悪そうだったからどうしても気になって」

「え?」

「昼休みに電話したけど繋がらないから、気になって帰ってきたら倒れてるから驚いた。熱高いし、インフルエンザかな? 俺、午後は休み取ったから看病するね」

「……インフルエンザではないって」

「そっか。それならすぐに熱下がるかな? あ、お粥作ったよ。食べれる?」

「うん、ありがとう……」

お礼を言いながら、上半身を軽く起こす。

翔君、私が具合悪いことに気付いてくれたんだ。
仕事だって忙しいはずなのに、早退してくれて……。
嬉しい。嬉しいんだけど……


「……ごめんね」


プライベートでもっと喜んでもらうどころか、迷惑を掛けてしまっている。仕事だって休ませてしまったし、約束していたご馳走も作れず、お粥を作ってもらった。

情けないな、私……。
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