触れられないけど、いいですか?
「はい。あーん」

お粥が一口乗ったスプーンを、翔君が私の口元へ運んでくれる。

……良い匂い。
さっきまで食欲は全くなかったのに、そっと口を開いた。


「美味しい」

「良かった」

本当に美味しい。これを食べたら、すぐに元気になりそうだ。


……だけど、ここまでしてもらった申し訳なさも、どんどん強くなってくる。


結局、お粥はすぐに完食した。


「夜になったらもう一度様子見にくるから、それまで寝てて。あ、夕飯は何食べたい?」

彼にそう尋ねられ、私の胸がまたズキンと痛む。


「さくら?」
< 202 / 206 >

この作品をシェア

pagetop