触れられないけど、いいですか?
少しの間眠って、目を覚ますと十九時だった。

コンコンとノックされる音が聞こえて「はい」と答えると、ドアが開いて翔君が現れる。

「ごめん、起こしちゃった?」

「ううん。ちょうど起きたところだった」

「良かった。ご飯食べられそうかな?」

そう尋ねてくる翔君は、少量のご飯と、スープと、フルーツメインのサラダが乗ったトレーを手にしている。


「美味しそう!」

そう言えば、まだ少し熱っぽいものの、お腹はさっきまでよりも空いている。


「良かった。自分で食べれる? あーんしようか?」

少しだけ冗談っぽい、そんな聞き方だった。多分彼は、私が〝自分で食べる〟と答えると思っているのだろうな。実際、いつもの私だったらそう返事するだろう。さっきのお粥は、つい食べさせてもらってしまったけれど。


「……うん。あーん」

だから、私がこう答えたものだから、彼は少し驚いていた。

……今日は、甘えるって決めたの。
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