触れられないけど、いいですか?
「すみません、よく喋る母で」

「とんでもない! さくらさんのお母さんのお陰で、こちらも緊張がほぐれました」

二人きりになっても、翔さんの明るさと優しい笑顔は健在だ。


「……翔さんも、緊張されていたんですか?」

思わず尋ねてしまった私の質問に、翔さんは。


「勿論です。さくらさんの様な素敵な女性とお見合いだなんて、考えただけでずっと緊張していました」


その言葉をうっかり鵜呑みにする程、私は子供ではない。
だけど、嫌な気分もしなかった。
女性を喜ばす社交辞令は、ある意味重要なスキルだ。
そう考えると、どこか頼もしさすら感じた。


「ちょっと、外に出てみませんか?」

翔さんから不意にそう聞かれ、思わず「え?」と聞き返す。


「この店に先に到着した時、軽く庭園を見せてもらったんですが四季折々の植物がとても綺麗で。良かったら、散歩がてら一緒に見て回りませんか?」

そう言われ、この店に入る時に外庭で見た綺麗なアマリリスを思い出した。
あの外庭以外に、庭園なんてあるんだ。それなら確かに見てみたい。


「はい、是非」

そう答えて、私たちは一緒にこの部屋を後にし、玄関から庭園へ回った。
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