触れられないけど、いいですか?
その夜。
翔君から仕事が終わったというメッセージが届いたので、私は彼を呼び出した。
呼び出した場所は、翔君との初めてのデートで来た公園。
遠目に見える夜景が、今日もキラキラと輝いてとても眩しく、そして綺麗だ。
「さくら。お待たせ」
スーツ姿の翔君が、明るい笑顔で私の元へとやって来てくれる。
「翔君。ごめんね、疲れてる時に呼び出したりして……」
「全然! さくらから誘ってもらえるなんて凄く嬉しいよ」
そう言うと、彼は私の頭にポン、と自分の手のひらを優しく乗せる。
……知らない男性とぶつかった時はあんなに怖かったのに、翔君の手の重みは、とても安心する。
そして……ドキドキする。
「寒くないし、ちょっと歩こうか」
翔君のその言葉に「うん」と頷くと、目の前に彼の右手を差し出される。
「手、繋げる?」
こうやってちゃんと聞いてくれるところ、本当優しいなって思う。
彼の優しさに、いつも安心させられてる。
「うん」
私も彼の右手に、自分の左手をそっと重ねた。