触れられないけど、いいですか?
翔君は「ごめんね」と謝ってくれるけれど、翔君の話を聞いたお陰で、少し心の荷が下りた。
優香さんに私のことを酷く否定され、やっぱり私は翔君には相応しくないんだとかなり落ち込んだけれど、彼女が否定的な言葉を浴びせるのは私だけじゃなかったんだ……。


でも、何で朝宮食品の娘と結婚するのかとか、男性恐怖症の私に日野川グループの御曹司の妻が務まるのかとか……優香さんに言われたことは的を得ている部分もある……。



「……翔君は、優香さんの裏の顔を知ってたんだね。仲良さそうに見えたから、意外」

「……多分、さくらは優香から凄く嫌な気持ちにさせられたと思うし、俺がこんなこと言うべきか分からないんだけど……優香も、根は悪い奴じゃないんだよ。恋愛が絡まなければ誰にでも親切だし、俺の家族のことも、いつも自分の家族のことのように気に掛けてくれて。
優香と仲良くしてやってとは言わないけど、そのことだけはさくらにも分かっていてもらえたらなって」


ーー根は悪い人じゃない。翔君がそう言うのなら本当にそうなのだろう。私は彼のことを信じているから、その言葉も疑わない。



「今すぐに、っていうのは難しいかもしれないけど、私もいつか、優香さんと親しくなりたいって思うよ」

「……うん、ありがとう」

「私ね、翔君は何で優香さんのことを好きにならなかったんだろうって思ってたの。それは、翔君が優香さんの裏の顔を知っていたから?」

私がそう尋ねると、翔君はうーん、と首を捻った。


そして。

「それもあるけど……それがなくても、俺があいつを好きになることはなかったよ」

「どうして?」
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