僕と彼女の時間
学生時代には、とても入れなかった店に結里を連れて行った。
料理とワインを注文して、結里はゆっくり話し始めた。
「あの次の日の朝、ソウルの母から電話があったの。父が交通事故に遭ったって。急いでソウルに帰った。でも父は脳の損傷が酷くて……。心臓が動いてるだけだった。会社も、すぐに私が継ぐのは無理だという事で、叔父が実権を握って、結局……」
「叔父さんに乗っ取られた」
「そう。韓流ドラマみたいでしょう? でも二十歳の私には何も出来なかった。叔父は母を一応役員に名前だけ載せて、毎月二人で暮らして行けるくらいのお金は振り込んでくれた。だから私はいつか叔父を見返してやるつもりでソウルの大学に戻って経済学と経営学を必死で学んで……」
「学位を取った」
「うん。経済学の博士号もね。私ね。今では叔父に感謝してるの。あの時の私には会社もたくさんの社員も、その家族も護って行けるだけの力も何もなかったから……」
「それで、お父さんは?」
「事故の一ヶ月後に……」
「そうだったのか。お母さんは?」
「母も勉強して、今では役員会で社長の叔父をやり込めるくらいになってるわ」
「さすが、君のお母さんだな」
「どういう意味?」
「そういう意味だよ」
結里は笑っていた。