俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
願いが通じたのか、秘書課には数人の女性社員しか残っていなかった。

茶封筒を手渡し、迷惑をかけた旨を再度謝罪する。

笹野さんも不在で、ホッと胸を撫で下ろす。


「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

応対してくれた女性に詫びて退出する。


その時、廊下で話しているほかの女性社員の声が耳に入ってきた。

「副社長はもう戻られている?」

「今、如月さんと副社長室にいらっしゃいますよ」

「それなら、この案件は後で確認していただこうかしら」


――如月さん?


ドクンと鼓動がひとつ大きな音をたてた。


女性たちとすれ違い、ぎこちなく廊下を歩く。

仕事上の関わりが多いふたりだし、気にする必要はない。

それなのに視線が、足が、副社長室に向かってしまうのを止められない。


なにをしてるの? 

戻りなさい!


冷静なもうひとりの自分が警告する。

こんな詮索するような真似をしてはいけない。

わかっているのに、気にかかってしまう。


すぐ近くに迫る、副社長室。

その重厚な扉はほんの少し隙間が開いていた。


如月さんの凛とした横顔が一瞬視界を掠めた。
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