俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「俺も大事な祖母をいい加減、安心させてやりたい。お前が二の足を踏むなら期間を決めてもいい」

「期間?」

「一年間は俺の妻として過ごしてほしい。それでどうしてもお前が納得できないなら一年後にきっぱり別れよう。その時、この仕事を辞めろと強制もしない」

「本当に、一年……?」


その言葉に少しだけ心が動いた。

期限付きの結婚なんて普通はありえない。


それでもこれは自分を守る保険にもなる。

一年の我慢と思えば、嫌な出来事もそれなりにやり過ごせるはず。

もし本気でこの人と想いあえなくても。

 
そこまで考えてハッとする。


お互いの条件のためだとわかっているのに、私は一体なにを望んでいるの。


「ああ、約束する。なんなら後で契約書がてら書面を作成する。ほかに必要な書類もあるし、お前も俺も互いにサインしあえばいいだろ? それにお前、あのホテルで俺との結婚を真剣に考えてるって自分から言い切ってただろ?」

「言ってません!」

「でもお前があの時想像したのは、俺だろ?」

してやったり、とでも言うかのように彼はニッと口角を上げる。


あのセリフ、やっぱり聞かれてたの?


恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

「あれはその、たまたま……」

「想像するくらいなんだから、俺はそれほど嫌な結婚相手ではないだろ?」

「それは、そうですけど」


もう、どうしてこの人は緩やかに私の逃げ道を奪っていくんだろう。

鮮やかすぎる手腕に、降参するしかない。


副社長の出した条件は悪いものではないし、なにより孝也と百合子さんの件が気になる。
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