俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「……わかりました、副社長と結婚します」

「本当に?」

「はい」

「よし、決まりだな」

途端に彼の声に明るさが滲む。

無邪気に相好を崩す姿にきゅうっと胸が締めつけられる。


「これからよろしく、奥さん。それといい加減に副社長と呼ぶのはやめろ。夫婦になるんだから」


お、奥さん?


突然の名称に驚く私の額に、小さなキスが落とされた。

温かくて柔らかな感触に心がなぜか震える。

拒否すべきなのに、突然の出来事に身体が動かない。


直後にふわりと唇を掠めた、柔らかな感触。

瞬きを忘れた私の目に、采斗さんの伏せた長いまつ毛と男性のものとは思えない、陶器のように滑らかな肌が映る。


「誓いのキスくらい、目を閉じろよ?」

甘く宥めるような声が耳に響く。

屈みこんだ彼の前髪が私の前髪に触れる。


反論しようと口を開きかけたその瞬間、すぐに唇で塞がれた。

先ほどとはまったく違う、熱いキスに心臓が壊れそうな音を立てる。


頭の中が真っ白になって、冷静に物事を考えられなくなる。

離れたと思うとすぐに角度を変えて触れてくる唇に翻弄される。


まるで浮き沈みを繰り返す私の心のようだ。

どこか性急なキスに心が痺れて、どんどん力が抜けていく。


最後に軽く下唇を食んで、彼が私の唇を解放した。

力が入らない私の身体の状態を知っているかのように、しっかりと腰に両腕を回して立ち上がらせる。


「絶対に離さない」
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