俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「でもまだ両親にも話していませんし」

「その件なら心配いらない。お前の両親には午前中に俺が説明に伺った。おふたりとも喜ばれていたぞ? もちろん婚姻届の証人欄も快く了承してくださったぞ」

「そんな話、聞いてません!」

「今、初めて言ったからな」

しれっと言い放つその姿に反省している様子は見受けられない。


どうりで午前中になんの呼び出しもなかったわけだ。

まさか両親に会うために外出していたとは。


本当に信じられない。

いくらなんでも唐突すぎる。


「……私が最終的に結婚を拒否するとか考えなかったんですか?」

悔し紛れに目の前の綺麗な面差しを睨みつける。

百合子さんがいるけれど、ひと言くらい文句を言わせてもらいたい。


「言っただろ? 俺は欲しいものは必ず手に入れるって」

口元を緩めるその姿は腹が立つくらいにカッコいい。

その堂々とした物言いに唇を強く噛みしめる。


「噛みしめるな、傷になるだろ」

そろりと長い指が唇に触れる。

その触れ方ひとつにさえ、心が揺れる。


私は怒っているのになんでそんな心配そうな目で見るの?


「あらあら、仲が良いこと」

間延びした百合子さんの声に、慌てる私とは対照的にのんびり返答する彼。

「大切な妻ですから」

「まあまあ、ご馳走様」

「あの、百合子さん……お身体は大丈夫ですか?」

「私? ええ、元気よ。この間の人間ドックでも先生に長生きできると太鼓判を押されたくらいよ。それがどうかしたの?」

「え?」

思わずジロリと副社長を睨む。


「話が、違いませんか?」

「祖母が気弱になってたのも、説得に躍起になっていたのも本当だぞ?」

ニッと口角を上げる姿に反省の色はまったく見えない。


なんて人。

でももう今さら取り消せない。

決断を早まったかもしれない。


それにしてもお父さんもお母さんもどうして反対しないの? 

こんな急展開ありえないでしょ? 


娘への理解がありすぎる両親に心の中で悪態をつく。

ただただ、この先の生活が不安でしかない。
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