俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
姉もこの突然の結婚に驚いていたが、反対しなかった。

そつのない副社長は私の知らぬ間に姉の自宅にも訪れ、きちんと許しを得ていたらしい。

本当にこの人はどこまでも抜け目がない。


その後、采斗さんのご両親に挨拶に伺った。

どこまでが敷地なのかと目を疑うほど広い立派な日本邸宅に足を踏みいれる私は緊張しっぱなしだった。


なにより、采斗さんのお父様は当社の社長なのだ。

雲の上すぎる人々との初対面にこの期に及んで逃げ出したくなったのは言う間でもない。


執事とおぼしき初老の男性に案内された応接室でご両親を待つ。


今日は百合子さんはご夫君が体調を崩されているそうで不在だ。

丁寧な謝罪をくださった時には本気で焦ってしまった。


そっと右隣に座る采斗さんを盗み見る。

現在、彼はこの豪邸に住んでいないという。


都内の一等地にそびえたつ自宅マンションを最近購入して、そこで生活しているそうだ。

しかもそのマンションの開発は当社が関わっていたというからさらに驚く。


「どうした?」

「え?」

「さっきからずっと俺を見ているだろう? なにか気になるのか?」

「いえ、あの、緊張してしまって」

「へえ、詠菜でも緊張するんだな」

いたずらっ子のように片眉を上げる。


「当たり前です。私みたいな一介の社員が副社長と結婚だなんて、ご両親はきっと反対されると思います」

「なんの心配をしているのかと思えば……」

そう言って、采斗さんはギュッと私の鼻を長い指でつまんだ。
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