俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす～お前は誰にも譲らない～
「本当だな。頑固者の息子に嫁いでくれるなんてありがたい。詠菜さん、これから末永く采斗をお願いします」

反対の言葉ひとつ言われず、逆に頼まれてしまう非常事態にうろたえてしまう。


「い、いえ、とんでもないです。私のほうこそ、至らない点だらけですが精一杯努力いたしますのでどうかよろしくお願いいたします」

勢いよく頭を下げるとハハッと頭上で明るい声が響いた。


「いいお嬢さんを選んだじゃないか。母さんが気に入るわけだ」

「そうでしょう。気に入ってくださるのはありがたいですが、勝手に連れ出したりしないでくださいね」

なぜか采斗さんが不機嫌そうに言い放つ。


そろそろと頭を上げると、お義母様が嬉しそうに手を握ってくださった。

「これからよろしくね、詠菜さん。一緒にお出かけするのが楽しみだわ」

優しい言葉に胸が詰まっていっぱいになった。

それと同時にこんなにも温かな人たちを騙すような結婚をしてしまう自分が嫌になった。


本来ならここに立って祝福を受けるのは私ではなかったはず。

この人には私なんかより、きっともっとふさわしい女性がいるはずなのに。


一年だけ、一年経てばこの場所を明け渡す。

それまではせめてもの罪滅ぼしにこの人の妻を立派に務めよう。

少しでもこの人の力になれるよう努力しよう。


そう心に固く誓った。
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