Last note〜特性を持つ者へ
俺はそっと、彼女の手を机に伏せて言った。

「分かりました。貴方を信じます。」

「青山!?」

難波さんが俺のやり方に口を挟んできたが、しょうがない。警察は人を疑ってなんぼだと教育も受けたが、何となくこの人にはピンと来なかった。

「刑事さん…。ありがとうございます」

ほっとした柊木さんからやっと、笑みが零れた。
少し落ち着かせた所で俺は続けて言った。

「ですが、この花瓶の紫陽花。
あの二丁目の公園に咲いてるものですよね?」

「え…。なぜ、それを…。」

大きな瞳をパッチリ見開いて俺を不思議そうに見る。

「このピンクの紫陽花は、この辺ぢゃあの公園だけですから。本当は被害者を見たの、1か月前の1度だけぢゃないんぢゃないですか?」

俺は賭けをした。性分ではないが、かまをかける。

「…すいません、本当は何度か、尾行されてる時に見ていたんです。」

「何故、隠したんですか?」

難波さんはストレートにそう聞くと、柊木さんは嫌そうな目で難波さんをチラチラ見ながら言った。

「ストーカー被害に合っても警察は動いてくれませんでした。そんな相手にすぐ心開けますか?
それにきっと、私が疑われてしまうかもと思ってしまって…すいません。」

彼女のそんな言葉に難波さんは小さく溜め息を吐いたが、意味有りげに俺とハンカチを交互にじっと見てきた。

「お気持ちお察しします。女性にとっては警察に相談する事がまずとても勇気がいったと思いますから。」

俺の言葉に柊木さんは、頬を染めて微笑んだ。

「優しいんですね…。」

あれ?なんか少しやり過ぎたかな?
柊木さんが凄く女性らしい表情つきになった。

「そろそろ失礼しますが、何か思い出した事などあればこちらに連絡お待ちしています。」

難波さんはそう言って自分の名刺を置くと、俺に出るぞと手で合図した。

「では、これで。」

俺は会釈をして、自分のハンカチを回収して柊木さんの家を出て行った。
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