Last note〜特性を持つ者へ
徒歩20分かけて俺と難波さんは、
今は咲かない桜並木の道を歩いていくと
右手に新しい小綺麗な喫茶店がある。

ナチュラルで優しい温かみを持つ木の素材を基調とした屋根に真っ白な壁。リースや花が飾ってあり、季節感も取り入れるように花壇には紫陽花が咲いている。
表に出ている木製のボードには、
見慣れた友人の綺麗な文字でメニューが書かれている。

「…Leaf、か。そういや去年の開店前に
1度だけ前を通った事があったな。」

「10時か。OPENしてるし入りましょう。」

シャランシャラン……。

ドアを開けると、可愛いベルの音が鳴る。

「いらっしゃいませ!……青山くん!?」

白いシャツに、黒いミニスカート。
そして「leaf」と胸元に小さいロゴの入った
薄いグリーンのエプロンをつけた女性が、
俺を見て子犬のように駆けつけ喜んだ。

「おはよー!ゆめちゃん!
元気にしてたー?」

俺は昔と変わらない対応で、両手を差し出すと
彼女は俺の両手にタッチしてきた。
本当、いつまでたっても子供みたいで可愛い。

「もちろん元気ー!久しぶりだね!
あっ!渉くん呼んでくるから待ってて!」

俺達をヒーターが近い席に案内してくれてから
彼女は小走りで厨房に入っていった。

「あの子も友人なのか?」

「はい、風野ゆめちゃん。昔親友と喫茶店でバイトしてた頃に一緒に働いていたんです。」

「そうゆう繋がりか。」

「ちなみに俺の彼女も働いてたんですよ。」

そんな事を話していると、奥から同じ制服を着た男前が腕まくりしていた袖を下ろしながら出てきた。
赤茶だった髪も、今は暗めの茶髪に落ち着いている。
「青山!久しぶりだな!
一丁前にスーツ、似合ってるぢゃないか。」

「廣瀬ー!会いに来たよ!」

ゆめちゃんが俺と難波さんにお水とお絞りを配る中、俺は廣瀬と久しぶりの再会を喜び合った。

「スーツ似合う?ありがとう!
今、捜査中なんだ。それに俺の上司にも廣瀬の事紹介したくて来たんだ。」

「どうも。難波です。」

「初めまして、廣瀬渉です。青山がお世話になっています。」

二人はお辞儀して挨拶を交わす。
そんな様子を見て俺は何だか嬉しくなった。
内心、やっぱり雰囲気とかガタイの良い所が似ているなとにやけた。
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