Last note〜特性を持つ者へ
本部に着き、すぐに取り調べ室に行きたかったが、そういえばずっとトイレに行ってなかった事を思い出して先に男子トイレに寄った。

ツン……。

「……うわ。何これ。」

ある個室を通り過ぎた時に、
嫌な匂いを感じた。

それはトイレの臭いなどではなく、
俺には分かる特性としての"匂い"…。

そしてそれは、
俺がいちばん嫌いな性的行為の後の匂いだった。

多少気になりつつも、待たせると悪いので早足で取り調べ室に向かった。

真っ直ぐ歩いていくと、
俺より少し年上位の若い刑事が、不機嫌そうに取り調べ室のドアにもたれて立っている。

「すいません、CSSの青山です。」

話しかけると、「あぁ?」とヤンキーみたいな返事で俺を睨んだ。

「なんや、あんたが青山か。
えらいチャラそうな男やなぁ。」

都会に馴染みたくないと言わんばかりの関西弁に、刑事の癖になんて口調だ。
俺は無視して行きたかったが、ちょっとカチンときてしまった。

「俺は硬派ですよ!急いでるんだ。
開けてくれないかな?」

笑顔でそう言うとまた睨まれたが、
タイミングよく内側からドアが開いた。

「青山くん!どうぞ入って。」

メガネの奥は優しそうな目つき。
ぽっちゃり体型が益々穏やかさを醸し出している
本田刑事が俺を手招いた。
取り調べ室に入る直前、さっきの男に舌打ちされたが、聞こえなかったふりをした。

「ごめんね、うちの烏丸が嫌な対応したね。」

「いえ…それで、柊木さんの様子は
変わらないままですか?」

とりあえず「烏丸」とゆう名前だけ把握して、
取り調べ室のマジックミラー越しに柊木日芽の様子を見ると、机の上で手を組んで目を閉じていた。

「変わらないね。烏丸の事情聴取で
始まったんだが…彼気が短いからさ、
怖がらせちゃったみたいで。」

「それで俺が呼ばれた訳ですね。」

苦笑いした本田刑事は扉をノックした。
中から返事が来たので部屋に入ると、
俺を見た柊木さんはホッとして見せた。

「お待たせしました。
さぁ、もう一度。
特性同士の話をしましょうか…。」

そう言うと、彼女は頬を染めて
こくん、と頷いた。
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