犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら
振り返ると、少し怒ったような顔をした浅香が突っ立っていた。
「お前バカか。風邪ひくつもり?」
そう言って私に今朝自分が来ていた見覚えのあるコートをかける浅香。
「浅香、自分のは?」
「俺はいい。酒飲まされすぎて熱い身体冷やしに来たから。」
確かに、暗くてはっきりとは見えないけど、普段全然赤くならないのに月明かりに照らされた浅香の顔はほんのり色づいて見えた。
「いっぱい飲んでたの?」
「あー。飲め飲めうるせーからな。
そんなことして酔っ払っても俺がテキトーに女抱くわけけねぇのに。
昨年も同じことされたから、逃げるためにコート持ってきてた。」
テキトーに女抱くわけけねぇのに。
その言葉が私の脳内をグルグルと回る。
「よく言うよ。」
と頭の中の気持ちが外に出てしまったことをたいそう後悔した。
浅香の顔がまた不機嫌そうに曲がったから...
「おい。どーゆう意味だ。
っていうか、お前の方が節操ねぇだろ。
今日、営業部の三宅とふたりで居たって?
さっき周りの女たちが言ってた」