夏の魔法



その日の放課後、僕と氷翠は魔法学校に建つ図書館に来ていた。

「私、98点だった」と氷翠が笑う。

「僕は、95点だった。僕の負けか…」と言うと、氷翠は「今回も勝った~!でも、美影の点数上がっているじゃん。頑張ったね」と言って僕の頭を撫でる。

褒められたことが、とても嬉しかった。昔の両親に褒められたことはあっただろうか…?と過去を思い返していくと、僕の記憶の中では1つもなかった。

良く僕達を褒めてくれたのは、小学校の先生だけだったな…とぼんやりと思ったりもした。

「美影…?」

気がつくと氷翠は、心配そうな顔で僕を見ていた。

「大丈夫なの?」

氷翠は、親友にしか見せないような態度を取っていた。氷翠を見ると、本当に心配しているのだと感じた。

「…大丈夫だよ!」と、無理に笑顔を作る。…そうした所で氷翠に気づかれるだろうけど。

「何で、無理をする?」

氷翠が、泣きそうな顔で僕に言った。氷翠の問いに対し、僕は何も言えずに立っているだけしか出来なかった。

「…無理してるのは、分かってるんだよ…!」

氷翠が叫んだ。僕は、口をつぐんで視線を地面に落とす。

「あの時、美影は言ったよね…『無理をしなくていい』って」

…そうだ。僕は忘れてしまっていた。『無理をしなくてもいいんだよ』と自分が放った言葉を。

「ごめん…僕、大事なことを忘れていたみたいだ……何で、身近に信頼できる人がいるのに…」

僕は、泣きながら「ごめんなさい」と言った。その様子に少し驚きながら、氷翠は僕の側を離れなかった。
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