夏の魔法
…僕は、何分間泣いていたか分からない。やっと、涙が止まり、僕の気持ちが軽くなった。
「…僕には、双子の弟がいたんだ」
僕は、双子の弟のこと、家族のことを全て話した。
「それで、それからどうなったの?」
氷翠は、表情や顔色を変えずに問いかけた。
「…覚えていない」
首を横に振る。氷翠は、ため息をつくと「…分かった。また何か夢とか見たり、思い出したら教えてよ」と言って、魔法をかけた。去り際に、「良く耐えてきたね。辛かったでしょ?」と優しく微笑んだ。
今日、氷翠は用事が入っていた。用事に行く時間のギリギリまで僕の話を聴いてくれた。僕は、氷翠に謝りたい気分になった。…こんな気分になるのは良くあることだ、と思いながら、僕は魔法図書館を出た。外は、薄暗くなっている。
家に向かって真っ直ぐに道を歩いていると、「美影!」と言う声と一緒に走ってくる音が聞こえてくる。…琥白だ。補習でもあったのだろうか
「琥白、こんな時間に下校か…もしかして、補習…?」
「違うんだ…」
「…じゃあ、どうしたの?」
「瑠梨(るり)が、まだ氷翠さんを忘れられないんだって…美影、助けてくれよ」
琥白がそう言った瞬間、僕の顔から表情が消える。それが、自分でも分かった。
「昨日が何の日だったか分かる?」
僕は、琥白に出来るだけ平静に聞いてみた。しかし、琥白は、分からずに頭をひねっている。
「…昨日は、英太の死んだ日だ。覚えている?」
僕の声は、とても低く、とても冷たい。紅月さんに告られた時よりも遥かに。
琥白は、険しい表情で僕を見つめる。僕の目には、光など灯っていないだろう。
「忘れていたのか。ふざけるな…僕がどんな思いであそこに居たか、お前には分からないだろ」