彼の溺愛はわかりづらい。


私と海堂に冷ややかな視線を向けられながら怒られたはーちゃん先生は、めんどくさくなったのか怯えたのか、「お、おぉ…スマン…。ちょっと俺、便所行ってくるわ」とか言って、どっかに行ってしまった。


…ってことは、海堂と二人っきり?

…ここで、性格もいいイケメンが相手だったら、確実に胸キュンシチュエーションなのになぁ。なぜに海堂とこんなイベント発生しちゃうんだろう。



「「…………」」



…気まずい。
いつも海堂がケンカ吹っ掛けてくるから、私と海堂がいる場で会話がないのって、何気に新鮮だ。

でも気まずい。なぜこんなときに喋らない海堂!!!



「…なぁ」



不意に、海堂が口を開いた。

…もしかして、私の心の声でも聞こえたのか!?



「…なに」



沈黙が破れた不思議な安心感は声に出ないようにと思っていたら、少し不機嫌そうな声になってしまった。

…まぁでも、相手はあの海堂だ。特に気にする必要ない。



「お前、なんで俺のこと嫌いなの?」

「………は?」



むしろそれ、こっちのセリフなんだけど。
どの口がそれを言ってんだ。今ものすごく目の前のヤツをぶん殴りたいわ。


…最初から、嫌ってたのはそっちのくせに。

あのとき、そっちの方から――――




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