彼の溺愛はわかりづらい。


3ヵ月前――







「じゃ、今から席替えするぞー」



担任の山センの一声により、入学早々の席替え。


…マジか。



「しぃ、離れるかもしれないってこと!?」

「ま、そーだね」

「うっわ…それは避けたい」

「ま、別にクラスは同じだし、いいじゃん。琴、人見知りってわけでもないでしょ?」

「…そうだけど」



それとこれとは話が違うということ、しぃはわかってないのかい。

…いや、多分わかってるけど、ドライなんだよなぁ、しぃは。



「なら大丈夫。それに、離れてもまた話せるでしょ?」

「うん」

「いいこいいこ。ほら、大丈夫だから。ね?」

「うん」



口調はかな~り穏やかなのに、なんであんなにドライなんだ。

…不思議で仕方ないんだけど。学校の七不思議とかじゃなくて、しぃの七不思議だよ。
今のところこれ一つしか不思議はないけど、掘ってみたら七つどころか十も二十も出てきそうだよ。



「一人ずつクジ引いてけー」



…山セン、怒るとめっちゃ怖いのに、超やる気ねぇな、今。
声からして既にダルそう。




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