彼の溺愛はわかりづらい。
ここに来て逃げんのかよ、羽澄。
さっきまでめっちゃ喋ってたの羽澄だから、なんとなく気まずいんだけど。散々「黙れ」とは言ってたけどさ。
「…あの、じゃあ、よろしくお願いします」
「あー、うん。つーか、年同じくらいだろ?俺は中3なんだけど、お前は?」
会話がないのもどうかと思ったから、歩きながら気になっていたことを聞いた。
「あ、私も同じ…」
「へぇ、そうなんだ。で、迷子だったっぽいけど、ここまで何しに来たんだ?」
「親戚の叔母さんに、なんか色々持ってけってお母さんに言われちゃったから、持ってきたんだ。公園でちょうど、その叔母さんと待ち合わせなの」
「…めんどくさくねぇのか?」
「まぁ、めんどくさいけど。でも、高校この辺にしようと思ってるから、どんなとこなのか知っておいた方がいいかと思って」
…それは、もしかして。
「この辺なら、二高とか?」
「そう」
「…俺も。近いとこ受けようと思ってたし、そこにしようかな」
「おー、すごい。でも私さー。勉強あんまり好きじゃなくて。学校で習う勉強…とかは、あんまり好きじゃない」
「…好きなやつの方が、特殊なんじゃね?」
「友達の中で、勉強好きな子がいるんだ」
「マジか。俺にはわからん」
「あははっ、私も」