彼の溺愛はわかりづらい。


触れた指先から海堂の体温が伝わってきて、私の体温も伝わってるのかと思うと、そこから心臓の音まで伝わってしまいそうなくらい、心臓がうるさくなった。



「…恋人つなぎじゃないんだ」

「恋人つなぎ?」

「…指と指を絡める感じのやつ。てっきりそっちだと思ってた私が恥ずかしい」

「いや、やるか」

「え…」



それほど驚く暇もなく、繋いだばっかりの手は離されて、また繋ぎ直された。

さっき移った熱がまだ残っていて、それが自分の体温と混じっていて落ち着かない。
それに、さっきよりも密着しているような気がして、それだけで鼓動が速くなってる。


手汗ひどくないかな、とか。
誰かに見られてたら恥ずかしいな、とか。

そんなの気にしていても、幸せだな…って気持ちの方が大きくて。

海堂もおんなじだったらいいなぁ。


そんな、らしくもないことを思いながら、前を向くにも向けず、意味もなく視線を地面に落としながら歩いてく。




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