彼の溺愛はわかりづらい。
「…なんかちゃんと、カレカノみたい」
「ちゃんとってなんだよ。カレカノだろ」
まさか、海堂からそんな言葉が聞けるとは思ってもなかったから、なんだか不意打ちくらった気分だ。
「…ふふ」
「なんだよ」
「なんか、手つないでるだけで、ただ歩いてるだけなのにデートみたいだな…って思って。嬉しくて」
デートっぽい場所に出かけてるわけでもないのに、デートみたい。
…今までにデートしたことなんかないけど。
「…可愛いこと言ってんじゃねぇよ」
「?なんか言った?」
「別になんも言ってねぇよ」
「?そう」
何か言ってるように聞こえたんだけどな。
私の聞き間違いか。なんか残念。
…あ、言いたくないことなのかもしれない。きっとそうだ。
「ね、今からどっか行く?私、少しならお小遣い持って来たんだ」
「別に…あ、ノートねぇから買いに行こうかと思ってたんだけど。見に行っていいか?」
「もちろん」
「じゃあ、駅ビルとか」
「了解。なら、反対方向だね。行こう。日が暮れる前に」