彼の溺愛はわかりづらい。


「まー、じゃ、とりあえずテキトーに片付けすっか」

「んー、まー、大体片付いてるけどね」



作業しながら次の作業の準備したり、前の作業の片付けをしたりする…いわゆる段取り力は、共働きの両親に代わって毎日料理をしているから培われたものだ。



「お前、すげーな」

「…そりゃどーも」



今日の海堂は、なんか変だ。
素直に私を褒めたり、私の変化に気づいたり、なんか優しかったり。

あと…ちょっとだけかっこよかったり。
…いや、それはおかしいのは私の方かもしれない。あいつがかっこよく見えるなんて。


…なんてぼんやり考えてたら、海堂がほとんど片付けを済ませていたようだ。



「ほら、終わったから。そろそろ行くぞ」

「お、サンキュ。じゃ、行こっか」



持ってきた荷物の中から水筒を出して、氷をいっぱい入れてキンキンに冷やしておいたお茶を飲んでおく。水分補給は大事。



「…っぷはー!うまい!」

「なんだ、飲み物持ってきてたのかよ。にしても、オッサンっぽい飲み方だな」

「うるせぇ」

「いい飲みっぷりで、いいじゃんってことなんじゃねーの」



…自分で言ったことに顔赤くして、恥ずかしい奴。

ただ、今のセリフのどこに恥ずかしくなる要素があったんだって話もあるんだけど。




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