彼の溺愛はわかりづらい。







「ハンバーグ一つ。あと、ドリンクバーもお願いします」

「…わかめうどん、冷えたの一つ」

「かしこまりました。ご注文を繰り返しますね」



店員さんのお決まりのセリフを聞きながら、向かいの席に座った海堂をコッソリ見てみる。

帽子も被らずに炎天下の中を歩いて、夏の暑さにすっかりやられて、いつもの覇気は1ミリも感じられないほどげんなりしているソイツは、さっきから出されたばっかりのお冷(つまり氷水)をがぶ飲みしていて、注文を聞きにきた店員さんに若干引かれている。

…ついでに言うと、水を飲み干してからはバッチリ氷をかじってる。


そんなことを考えているうちに、いつの間にか店員さんはいなくなっていたから、私はドリンクバーに飲み物を取りに行こうとした。



「…俺も行く」

「あんた、ドリンクバー頼んでないでしょ」

「水、おかわり」

「あ、そ」



まだ飲むのかよ…とか思いつつ、私も海堂も席を立…



「あ、ダメ。荷物番してて。私が水も取ってくるから。あ、待ってる間は私の分の水飲んでいいよ」

「…そうか、サンキュ」

「ん」



家族でファミレス来るときとか、友達と大勢で来るときは、二人同時に立ったところで大差ないんだけど、二人で来たときは危ないだろうし。




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