彼の溺愛はわかりづらい。


「へ?」



…おいおいおい。

俺の勇気の一言を、そんな間抜けな声で片付けないでくんない?



「ちょ、やだ。あんたのファンとやらに殺されるからやめてよ」



…やだって…。

結構、いや、既にかなりHP削られてるんだけど。


でも、それってもしかして、さ。



「…殺されなければ、いいのか」

「なにが?」

「だから、『デート』でいいのかって言ってんの!」



ダッセ、俺。
こんなにムキになって。


…というかそろそろ、コイツに俺の気持ち一ミリくらいは届いててもいいんじゃね?

…早く気づけばいいのに…って気持ちと、気づかないでいい…って気持ち、両方あって、自分がおかしく感じる。


…あー、もう。
早く何とか言えよ、渋川。

無言がいちばん堪えるんだって。早く返事しろよ。
「冗談でしょ?」って笑い飛ばしてもいいから、何とか言ってくれ。お願いだから。


怖い半分、期待半分。




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