彼の溺愛はわかりづらい。
だからどっちかっていうと、「はーちゃん先生」よりかは「羽澄」の方が馴染みあったんだけど、すぐにバレても面白くないし、何より他の先生に誤解されんの面倒だから、「はーちゃん先生」って呼んでた。呼んでる。
…んだけど、海堂の親戚だったとは……(再び)
「え、琴から変わったね。まぁ、見つかって処分とかされるの面倒だからそっちの方がいいけど」
「…代わりに、俺が琴って呼んでやろうか?」
「…………は?」
クソ海堂が、なんかトンチンカンなことを言ってくるんだけど。
…なんだ?空耳か?
「だ~か~ら!名前呼びしてくれる男がいないお前が哀れだから、俺くらいは名前で呼んでやろうか?って言ってんの」
「余計なお世話だ。つーか想像しただけで鳥肌ものだわ。そもそもいるし。名前呼びしてくる男。勝手に決めつけて哀れんでるんじゃねぇよ」
私がそこまで言うと、ヤツはものすごく顔を歪めてから舌打ちした。
……その姿をどうぞファンとやらにも見せてやれ。きっと軽く学校崩壊するぞ。
「琴」
「さっぶ!雪国並みに寒いわ!ってか、それ以上に異常だわ!」
「それダジャレか?渋川妹」
「はーちゃん先生は少し黙って」
少々イライラし始めた私の声色を聞いて、はーちゃん先生はそれ以上何も言わなくなった。