秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
ミモザさんにはいつもお世話になっているので、迷惑をかけてはいけない。
美人でいつも背筋が伸びていて、キツそうな印象のある人なんだけど、こんな罪人の私にもとても良くしてくれるのだ。
ミモザさんが私の部屋で待ってるとなれば、帰らないわけにいかない。
「わ、わかりました、帰ります……」
そう言って、謝罪の意味も込めて頭をペコリと下げる。
結局、手ぶらで静々と帰ることとなってしまった。
「ラヴィ」
踵を返し、背を向けたところで呼び止められる。
振り返ったその先には、アルフォード様の甘くて美しい笑顔があった。
「私も後で部屋に顔を出すよ。その時は、ミモザと三人でカードゲームをしよう」
「……はい!」
怒られてしょんぼり気分もなんのその。
この笑顔と何気ない一言で、私の気分は一気に天にも昇る。
アルフォード様とカードゲーム出来るなんて嬉しい。……何よりも、その気遣いが嬉しい。
「じゃ、後で」と手を挙げて、招待客の群衆に紛れていくその背中を、今度は私が見送る。
背が高くて正装を纏ったスラリとした体。でも肩幅はあって。
ああ、やっぱり素敵だなぁ……。