秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
うっとりとしてしまう。
これは、憧れなのか恋なのか。……いやいや、両方でしょう。
そうでなければ、彼の姿が五年前から心の中に棲みついているわけがない。
……こんな冤罪で追放されたという状況下で、こんなことを言うのは不謹慎なのかもしれないけど。
アルフォード様が近くにいる日々は、幸せだ。
お傍にいると、私の記憶の中にいた彼を思い出しては、昔と変わりないのだと安心し。先程のように、面白くない表情でぶつぶつと不満を述べるその姿は、今まで私が知らなかった彼の姿。
とても新鮮で彼のことをまたひとつ知れた、と嬉しくなる。
そして、周りにある全てのものが輝いて見えて、ひとつひとつ大切なものになっていく。
ああ、罪人のくせにこんなに幸せでいいのだろうか。
だが……紛れもない事実、私は罪人なのだ。
そのことをあっちに置いといて、幸せを騙るには、解決しなければいけないことがいくつも。
いくつも、ある。
ーーー私は、それに立ち向かえるのだろうか?
そんなことを思いながら、他の令息と談笑を交わしている彼の姿を遠くから見守る。
……その時のことだった。
「ーーアル!あぁ、アル!」