秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

人混みを無理矢理駆け抜けているのか、あちこちから「きゃっ!」だの「わっ!」だの悲鳴が上がっていた。

群衆の中にいる人間のことなどお構いなしに強引に通り抜け、数々の人々と迷惑に接触しているようだ。

そんな中から飛び出して、アルフォード様の前に現れたのは、ピンクブロンドの艶々とした長い髪を靡かせた美しい女性だった。

(なっ……!)

……だが、姿を認識すると同時に、私はグッと息が詰まる。

何故、この令嬢がここに現れたのだろうか?



私は、この女性を……知っている。




《神殿の……聖女見習い?》

《神殿が貴族平民問わず聖力を所持した者を集めて、独占してるって話を聞いたことがあるわ》



……あの時、あの場で。私たち聖女見習いを、神殿をさりげなく罵った、あの令嬢を。



「アル、アル!会いたかったわ、あぁっ!」

「ローズ……?」



令嬢の突然の登場に、混惑した表情を見せるアルフォード様。

だが、そんなアルフォード様に構わず、手を伸ばす令嬢。

その光景を視界がしかと捉えながらも、私は……あの時の場面が頭を過ったのだった。
< 104 / 399 >

この作品をシェア

pagetop