秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
《やだっ、恐いわアゼリアさん!》
《俺の女神を傷つける醜女よ。この正義の刃で切り刻んでくれる……!》
……思い浮かべては、再び恐怖が走る。
アゼリア様に敵意を向ける、あの時のアルフォード様の冷たい瞳が。
そして、その時にエリシオン王太子殿下やアルフォード様ら側近の高位貴族の子息らを侍らせていたのが……今、ここに姿を現した令嬢。
ローズマリー・トルコバス侯爵令嬢。
「ローズ、どうしてここに?!」
現実では、突然現れた令嬢は、アルフォード様の胸の中へと飛び込んでいて、アルフォード様はますます混惑状態といったところだ。
公衆の面前で殿方に抱きつくなど、淑女にはあるまじき行為。今の出来事を目の当たりにした、周りの疑惑混じりのザワツキがそれを物語っている。
だが、当の令嬢はそれを恥ずべきことと思ってないのか、アルフォード様から離れることなく、むしろ豊満な肢体を押し付けて「うっ、うっ……」と、泣き声を漏らして肩を震わせていた。
……胸騒ぎがする。
私の心臓は、自分の意志とは裏腹にただドクドクと高鳴っていた。