秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
『何もローズは平等に優しく接したいという、素直な思いを伝えただけなのだから。そんな揚げ足ばかりとって、捉え方が捻じ曲がってるんじゃないのか?』
『本当に、着飾ってお茶ばかり飲んでいるヤツらの思考は、得体が知れない』
……宰相の甥も、大臣の嫡男も何を言っているんだろう。
一介の貴族令嬢が素直な思いをただ伝えただけであの言動には問題がある。
揚げ足を取られないように言葉を選ぶ、また取られてもそれに対応する術を持つのが貴族令嬢というものではないか。
捉え方云々は問題じゃないし、涙を浮かべて殿方の後ろに隠れるそちらの令嬢の行動なんて問題外だ。
……そして、王太子殿下も。アルフォード様も。
『ローズを責めて吊し上げようだなんて、俺たちが許さない』
『人の心を失くして、ローズへの美しさの妬みに溺れるのか貴様ら!』
言ってることがめちゃくちゃだし、長年想い慕っていたアルフォード様の口から、そのような非常識なセリフは聞きたくなかった。
こんな形だが、数年ぶりの再会だというのに……私の存在にすら気付いていない。