秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
それに、王太子殿下が貴族の矜持もあったもんじゃないセリフを吐き、どこぞの馬の骨の令嬢を背に庇い、婚約者であるアゼリア様に敵意を向けることも、ショックで仕方がない。
これは私たちを笑わせるための何かの冗談かと思わせるぐらい、どう考えてもおかしい発言ばかりだ。
だが、空気感が全然冗談ではなく、互いに本気で物凄く険悪だ。騒ぎ立ててしまっているので、通りすがる人々がこちらをチラホラ見ている。
口論の原因となった私たちは、ただ狼狽えていた。中には震えて泣きそうになっている子もいる。
するとそこで、公爵令嬢という、王族の次に身分のあるアゼリア様が私らの前に一歩出て、ローズマリー令嬢や自身の婚約者、令息らに一言告げるのだった。
『エリシオン様、トルコバス侯爵令嬢。冷静にお考え下さい?先程の発言は、慈愛の思いではなく、神殿への侮辱以外何物でもありません。撤回下さいませ』
発言の撤回を求め、ローズマリー令嬢に迫るアゼリア様。さすが、未来の王妃だ。佇まいが凛として、堂々としている。
……なのに。このローズマリー令嬢とやらは、発言の撤回どころか、更なる失言を重ねるのだった。