秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

その先にいたのは、未だ地に転がって倒れたままの男性が一人。

……先程、私が体当たりをして突き飛ばした男性だった。

そこにいたのですか。まだ倒れていたのですか。

起き上がれないなんて、私の体当たり、本当に痛かったのでしょうか?すみません……!



「ふぁ、ファビオっ。あの人は、さっき私が体当たりしちゃった人で」

「ほう?ラヴィが?おまえなかなかやるな」

「ややや、だって叩いてくるし、まさか死……」

「いや、息はあるぞ。……でも、あの男だけ、アンデッドみたいに再び起き上がってないんだよ」

「え?」



……そうだ。例え、フェビルディストで吹き飛ばされても、アルフォード様に峰打ちされても、ミモザさんやファビオに蹴られても。

体にダメージを受けようとも関係なく、【魅了】の手にある彼らは、何度も起き上がってはこっちに刃向かってきていた。

なのに。私が体当たりしちゃった人だけは、倒れたまま?

これは……!



「まさか、本当に死んで……わあぁぁっ!」

私、人殺しを……!

「ちゃうちゃう。ラヴィ、恐らくおまえさんの力が働いたんじゃねえの?」

「えっ」

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