秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

考え?それって……?

と、口にする間もなく、ファビオは私の肩を抱き、顔を寄せて小声で話し始めた。

ファビオの考えとはいったいどんなものか。恐らく、この窮地を脱する作戦であろうと想像し、真剣に耳を傾ける。

の、だが……。



「おい、ラヴィ。あのピンク頭に体当たりしろ」



は……。



「えっ!」

「うーん。体当たりだけじゃ足りねえかも。体ガッチリ掴んで羽交い締めか」

「はがっ、ひぇっ?!」

あまりにも想定外な要請に、変な声が出た。

それもそのはず。

私が、ローズマリー令嬢に体当たりの羽交い締めに?!……体術の心得もない、女性であるただの聖女見習いの私に、そんな力技ですか?!

「ち、ちょっとファビオ!体当たりに羽交い締め?!私、ただの聖女見習いだよ?体術だなんて、そんなこと出来るわけないでしょう!」

「え?出来ない?ただの体当たりだぞーぅ」

「で、出来ないよ!何を言ってるの!」

「えー。だって」

そう言ってファビオは未だ地に倒れている、私が体当たりで倒してしまった男性を指差す。

「すでにやっちまってるでしょ」

「わわわわ!」

それを引き合いに出されては、何も言えないじゃないか。
< 335 / 399 >

この作品をシェア

pagetop