秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
考え?それって……?
と、口にする間もなく、ファビオは私の肩を抱き、顔を寄せて小声で話し始めた。
ファビオの考えとはいったいどんなものか。恐らく、この窮地を脱する作戦であろうと想像し、真剣に耳を傾ける。
の、だが……。
「おい、ラヴィ。あのピンク頭に体当たりしろ」
は……。
「えっ!」
「うーん。体当たりだけじゃ足りねえかも。体ガッチリ掴んで羽交い締めか」
「はがっ、ひぇっ?!」
あまりにも想定外な要請に、変な声が出た。
それもそのはず。
私が、ローズマリー令嬢に体当たりの羽交い締めに?!……体術の心得もない、女性であるただの聖女見習いの私に、そんな力技ですか?!
「ち、ちょっとファビオ!体当たりに羽交い締め?!私、ただの聖女見習いだよ?体術だなんて、そんなこと出来るわけないでしょう!」
「え?出来ない?ただの体当たりだぞーぅ」
「で、出来ないよ!何を言ってるの!」
「えー。だって」
そう言ってファビオは未だ地に倒れている、私が体当たりで倒してしまった男性を指差す。
「すでにやっちまってるでしょ」
「わわわわ!」
それを引き合いに出されては、何も言えないじゃないか。