秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
「うーん……」と、考え込んでしまい、動くに動けなくなっている私。
だが、そんな私の心情を察してからなのか、ファビオは私に一言投げかけた。
「ラヴィ」
いつになく真剣な顔で。
「『ーー御世界に、異世界の【邪悪なる気】が蔓延る時、【秘匿されし聖女】が、牙を向ける』」
「え……?」
「『聖女らの祈りも届かぬぐらい、邪悪なる気が世界を恐慌に陥れるその時、秘匿されし聖女が、己の力を以って邪悪を滅ぼす』んじゃねえのか、ラヴィ」
「ファビオ……」
「それが、今なんじゃねえのか?ラヴィにしか出来ないことなんじゃねえのか?【邪】に牙を剥くのは」
ファビオの強い視線に圧倒される。私は何も言えなくなってしまった。
「あ、あの……」
何を返していいのかわからず、恐る恐る口を開く……が。
「なんてな?いひひひ」
ファビオの顔が急に変わり、ニーッと笑いかけられる。
……えっ?!
「なぁーんてな?な?……なぁーに。心配するな?あのピンク令嬢の隙ができた時に、ドーン!と突っ込めばいい話よ!怯むな怯むな、ドーンといけ!わははは!」