秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
何をどう言っても突っぱねられ、説得にも耳を傾けてもらえず、アルフォード様は絶句していた。
茫然としたその表情はとても苦しそうに歪み、瞳が揺れている。
その悲痛な表情を目にして、感覚的に思わずにはいられなかった。
その辛い表情。
(心が……泣いている)
あの時と、同じ。悔恨を残す表情。
アルフォード様が、また悲しんでいる。悲しい思いをさせてしまった。
貴方にまた、そんな顔をさせてしまった……。
その顔を見ているだけで、もう心が痛む。
もう、胸が痛い。痛すぎるほど。
……だからこそ、なのか。
私の中には、先程にはなかった思いが芽生えてくる。
(……この令嬢を、止めないと)
決意、ともいうべきか。
「……ファビオ」
二人の様子から目を離さず、隣にいるファビオの袖をちょんと触る。
「おっ。行く?行くの?」
「……」
無言で頷いた。
出来る、出来ないの問題ではない。
大聖女様の御身を守るため。アルフォード様に悲しい思いをさせないため。
やらなくてはならないのだ。