秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない
邪が蔓延るだとか国の危機だとかよりも、私の周りにいる大切な人を傷付けさせないため。
……もう、逃げることはしない。
そう、誓ったのだ。
ファビオと顔を揃えて、ローズマリー令嬢の動向を真剣に見守る。
穴が開きそうなぐらい、顔が強張るぐらい。
「なぁーに。俺に任せとき?ちゃんと合図してやんよ」
「うん」
私に穴が開くほど見つめられている、その動向はというと。
「大丈夫よ、アル!さあ、私の手を取って?一緒に戦おう?私たちが一緒なら、怖いものなんて何一つないわ?」
ローズマリー令嬢は劇場のヒロインさながらに、正義の味方かのように振る舞っている。
アルフォード様に手を差し伸べるあたり、ここまで来てもアルフォード様が味方になると信じて疑っていないのだ。
どこまでも人の話を聞いていない。
アルフォード様の苦しそうな表情が、彼女には見えないのか。
「アル、迷っているのはわかるわ?相手は大きな敵だものね?……でも、アルには勇気が備わってるわ?だって、ここに来てくれたじゃない!私への愛のために!」
「……いや、そうじゃない」
「へ?」