秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない

ローズマリー令嬢はきょとんとしながら、首を横にふるアルフォード様を見つめる目を見開かせていた。

『私への愛のため』を全否定されたからか。



アルフォード様は苦しそうな表情を堪えて、目の前のローズマリー令嬢に向かって語り掛ける。



「ローズ……君は、とても素敵な女性だ。いつも笑顔で……何度励まされたかわからない。君のことは大切に思ってるよ」

「そ、そうよ?私たち愛し合って……」

「君は大切な……友人だから」

「へ……だ、だって、あんなに愛してるって」

「俺がここに来たのは、君の手を取るためじゃない。大切な人を護るためだ。それは……君じゃない」

「……」

ローズマリー令嬢の目が更に見開く。アルフォード様に突き付けられた宣言が意外で動揺しているかのよう。

アルフォード様を一点に見つめ、半ば放心という状態だった。



(……あっ!)

その時、ほんの一瞬ではあるが。ローズマリー令嬢を取り巻く【邪気】の流れが止まった。

ローズマリー令嬢の感情と連動して、動揺に反応したのか。

これは……!



「ーー今だ、ラヴィ!」

「はい!」
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